編集長のズボラ料理(586) 豚肉とハクサイの重ね蒸し
最近、ハクサイのうまさを再認識している。テレビ番組でハクサイを取り上げていて、たまたま見たからで、そんなに深い話ではない。影響されやすい人間だと思う。
おふくろはハクサイの漬け物が好きだった。特に茎の部分を好んだ。子どものころの僕は、周りの子どももそうだったように、漬け物を好んで食べることはなかった。漬け物は大人のものだという第1方程式が、頭の中にあった。さらに第2方程式があり、ハクサイの漬け物の茎の部分を食べるのは年寄りといういものだった。
子どもの場合、第2方程式と逆となる。ハクサイの漬け物を食べざるを得ない時は、葉を食べる。親子で食べ分けができているのだ。しかし、年齢が上がるに従って、茎も食べるようになっていく。
テレビ番組は、茎と葉に分けて調理をしていた。葉は小麦粉をまぶし、フライパンで重ね焼きするだけのものだった。実際に作ってみたが、ハクサイの力を知った。
力をもっと知ったのは、茎の部分だった。茎の部分だけ20分間煮る。このスープが、中国宮廷料理では大変ランクの高いものだと説明があった。
そうだったのかあ。これで長年の謎が解けた。日本の料理でもハクサイをよく使うが、中でも鍋料理にはなくてはにはならない。主役ではないのに、大量に入れる。これが不思議だった。
大量だと思っても、煮れば量は少なくなる。うちではハクサイの取り合いになり、もっと入れておけばよかったと後悔する。主役の豚肉lや鶏肉、あるいは魚が残っていても、ハクサイは影も形もなくなる。
実は、ハクサイがなくなるのは、貧乏根性が身についているからだと思っていた。高い肉や魚に手を出すのにちゅうちょして、安いハクサイに手が伸びたと分析していた。どうも、そうではない。
ハクサイを大量に入れるのは、茎から出るスープがおいいしいからだ。魚の鍋でまずアラを入れるのと同じなのではないか。骨は食べられないが、茎は食べられる利点もある。だから、ハクサイを食べるのだ。そう気づたのだが、その時はもう年寄になったいた。子どものこに覚えた第2方程式は正しかった。
ハクサイは茎と葉に分ける。茎を15分煮る。鶏ガラスープの素、ローリエ、塩、コショウも加える。茎はいったん取り出す。タジン鍋に茎と生の葉を敷き、その上に豚肉の切り落としを並べ、コショウをふる。これを繰り返し、ハクサイと豚肉のミルフィーユを作る。上からハクサイスープをかけ、火にかける。タジン鍋がなければ、皿の上でミルフィーユ状にし、スープをかけたうえで、鍋で蒸し焼きにする。
大分前から、ハクサイの漬け物は茎も好むようになった。ハクサイ方程式は第1も第2も正しかったのだ。(梶川伸)2022.03.12
更新日時 2022/03/12