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編集長のズボラ料理(479) パスタ・山椒ジェノベーゼ

パスタ・山椒ジェノベーゼ

 友人から「山椒(さんしょう)ジェノベーゼ」なるものをもらった。僕がサンショウ好きだと言いふらしているから、「うるさいやつだ」と思い、黙らせるためだったに違いない。理由はどうあれ、もらい得である。
 バジルの代わりに、兵庫県養父市の朝倉サンショウを使っていた。サンショウのピリピリ感はかんきつ類のような爽やかさに代わっていて、使いやすい。
 以前も言いふらし作戦が成功したことがある。朝倉サンショウの実サンショウと葉サンショウの苗木をもらったの。葉サンショウは毎年、少しずつ積んでは、手のひらでパーンとたたいて、みそ汁に入れている。
 実の方は残念ながら、うまく生育しない。何とか生きてはいるが、成長しないので、実を採るなど全く可能性がない。でも、大丈夫。僕には冷凍のサンショウの実がある。
 僕と同じ年に定年になった奈良の友人で、遊び仲間をつくっている。新型コロナウイルスの影響で会う機会が減ったが、基本方針として月に1度、例会を開いている。テーマはいつも「定年後はいかにして生きるか」。崇高で哲学的な例会といえる。今年で14年目になるが、決してブレることはない。そのテーマ自体が酒のあてだから、もし結論が出でしまったら、例会は終わってしまう。
 メンバーの1人の実家が奈良県天川村で、みんなで泊まりに行ったことがある。大きなサンショウの木があり、たくさん採って帰った。
 さて、それをどうするか。考えた結果、プラスチック容器に入れて冷凍した。これが成功で、いつでも緑色の実を取り出して食べることができる。それ以来、毎年初夏に実をたくさん買って、冷凍している。
 先日、思わぬことがあった。冷凍室のサンショウの実を使い、また冷蔵庫の戻した。半日ほどたって冷蔵庫を開けると、容器は冷凍室ではなく、冷蔵室に間違えて置いていた。さあ、大変。緑色はすっかりくすんでしまい、見た目のおいしさがなくなっていた。
 少しだけ救いがあった。みそ汁など熱いものに実を丸ごと入れると、やや緑が戻る。サンショウの実は大量に買ったので、まだ半分ほど残っている。そのうち、今年のきれいな実が出てくる。くすんだ実を食べ続けるか、新しい緑に替えるべきなのか。悩ましい問題が浮上してきた。
 今回は山椒ジェノベーゼを使う。パスタをゆでる。最後は湯をわずかにし、切ったベーコンを入れてひと煮炊きし、ざるにあける。さらにボールに移し、山椒ジェノベーゼであえて、皿に盛る。
 山椒ジェノベーゼの瓶を見ると、使い方として、パスタが書いてあった。それに忠実に従っただけのズボラ料理。(梶川伸)2021.02.07

更新日時 2021/02/07


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