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編集長のズボラ料理(483) 揚げナスポン酢

小麦粉にカタクリ粉を混ぜてもいい

 デコポンが一般に流通するようになった時には、「何とまあ」と感じた。ちょっとおかしな名前で、これで売れるとは思わなかった。
 デコもおかしい。デコボコのデコだし。デコチンのデコだ。ポンはポン菓子、ポンポンお菓子のポンだし、マージャンのポンだ。
 おかしいのは形もそうだ。何で一部がポコンと出っ張っているのか。大きな器に盛ろうとしても、ピラミッド状に重ねられないではないか。
 自宅近くのスーパーでは、デコポンの説明を音声で流しながら売っている。まだ十分になじみがないからかもしれないが、それでもデコポンは定着してきた。いや、人気があるといってもいい。ポンのくせに。
 でもポンカンがあって、これも人気だ。だからポンが必ずしも悪いわけではない。
 ポン酢もおなじみだ。かんきつ類には、ポンを使うのだ。そう思っていた。
 ところが、思いがけない説を知った。オランダで「ポンス」というかんきつ系の飲料があり、ポンスからポン酢となったという。ポン酢はポンがつくかんきつ類を使った酢ではなく、ポンズという酢だったのだ。びっくりポンでる。
 昔はポン酢といえば、ミツカンポン酢だった。ただ大阪では昔から、旭ポンズが根強いファンに支えられている。
 30年ほど前から、高知県馬路村のユズのポン酢が、ユズ飲料「ごっくん馬路村」とセットで、人気を集め始めた。そのころから、ポン酢は激戦時代に入った。使っているかんきつ類もユズ、スダチ、ミカン、シークアーサー、カボスとさまざまだ。
 遍路旅の先達(案内人)で何度か、馬路村の馬路温泉で泊まった。食卓にはユズのドレッシングが置いてあり、用意された水にも、ユズが入っていた。ふろに入れば、シャンプーにもボディーソープにもユズが使ってあった。宿を出発する時、遍路旅の参加者の何人もが、ユズポン酢を土産に買った。ユズまみれの遍路で、それほど日本人はポン酢が好きだということだろう。
 ナスを6つか8つくらいの短冊に切る。小麦粉をまぶし、油で揚げる。ポン酢をかけ、上に大葉の千切りをふる。
 これも料理かと思うほど、ズボラな料理。そして、ポン酢に頼り切った味つけ。どのポン酢を使うかはその人の好みだから、ズボラの最たるものと言える。(梶川伸)2021.02.20

更新日時 2021/02/19


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