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編集長のズボラ料理(464) 豆腐とアナゴの照り焼き炒め

ウナギを使ったものは、編集長のズボラ料理(30)に掲載

 ウナギとアナゴ。よく似ているが、人気は圧倒的にウナギだろう。
 両親が生きていたころ、僕がごちそうした食べ物で、喜んだものが2つある。1つは北陸の船宿に泊まって食べたカニだった。おやじはビール大好き人間だった。昔人間に多かったキリンビールのこだわり派で、好きなあては小イワシ。焼いて大根おろししょうゆで食べる。それほど食べ物がほしい酒のみではなかった。
 船宿でカニが出ると、普段とは違った。ビールも口にせず、黙々と食べた。
 もう1つはウナギだった。僕は徳島勤務だったことがある。そのころ、徳島はウナギの産地でもあった。
 両親が遊びに来たので、山口屋という店に案内した。特におふくろが喜んで、徳島に来るたび、山口屋を要求するようになった。両親は亡くなったが、僕も影響を受けて、遍路などで徳島に行くと、今でも山口屋に寄ることがある。
 ウナギには土用の丑の日という、国民的イベントもある。このため、両親に限らず、ウナギ好きは多い。わざわざ高知まで行って、ウナギを食べる友人がいる。息子の奥さんの実家が高知で、子どもつれて里帰りする時に車で送ることを名目に、向こうでウナギを食べるらしい。それは正当な理由なのかどうか、ちょっと疑問が残る。
 その友人は兵庫県明石市に住んでいる。グルメだから、地元の鮮魚中心の商店街「魚の棚」に誇りをもっている。その商店街を「うおのたな」と読もうものなら、すぐに「うおんたな」と、レッドカードを突き付ける。
 その友人はウナギだけだと思ったら、アナゴもうるさい。どこの店でもいいわけではない。魚の棚の林喜商店の焼きアナゴしか、世の中にないと思っている。
 そこで僕は対抗する。新聞記者の現役時代、兵庫県高砂市、下村商店の焼きアナゴを職場にいただき、みんなで食べたことがある。社員食堂でご飯だけを頼み、いただき物を食べた。その思い出がかるから、「アナゴは下村商店やなあ」と、いかにも知ったかぶりで言う。たった1回食べただけなのだが。
 スーパーに行くと時々、焼きアナゴ(かば焼き)の切り落としを売っているので、それを使う。豆腐は水切りをして、食べやすい角切りにする。フライパンに油をひき、豆腐とアナゴを炒める。味付けは、しょうゆ、みりん、酒。皿に盛って、サンショウをふる。
 もちろん、アナゴは切り落としでなくてもいい。しかし、林喜商店や下村商店のものなら、もったいないからそのまま食べた方がいい。(梶川伸)2020.12.12

更新日時 2020/12/12


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