心にしみる一言(258) どこも行けない私のために、お大師さんと母がくださった空間
◇一言◇
どこも行けない私のために、お大師さんと母がくださった空間
◇本文◇
四国の遍路道沿いには、お遍路さんをもてなす「お接待」という風習がある。私も巡拝している際に、食べ物や飲み物、手作りの小物、時にはお金さえもいただいた。
お接待をする常設の場所を接待所という。徳島市の13番札所・大日寺の手前にも、「おやすみなし亭」と名づけた接待所がある。森千津子さんが造った建物で、休憩もでいるし、中には飲み物や果物、お菓子が用意してある。先達としてみなさんを案内する際には、なるべく寄ることにしている。
2012年4月に休憩した時には、森さんの姿があった。良い機会なので、みなさんと一緒にしばらく歓談した。甘夏、小夏などのミカン類のお接待を受けながら、森さんの話を聞いた。
――母親が95歳になるまでの10年間、介護を続けた。どこへもいけない。そこで家にあるミカン類をお遍路さんに食べてもらおうと思って、休憩所を作った。
森さんはお接待所造った理由を語った後、取り上げた言葉を口にした。
――どこも行けない私のために、お大師さんと母がくださった空間。いろいろなご縁ができた。パンフラワーを作ってくださる人、季節の花の絵を描いてくれる人。
その時点で、「5月から8年目に入る」と言っていた。それからさらに6年が経つ。
(梶川伸)2020.09.19
更新日時 2020/09/19