編集長のズボラ料理(775) はんぺんの昆布じめ
大阪はコンブ文化だという。江戸時代は流通の拠点で、北海道の昆布を沖縄に運んで商売をした。意外なことだが、沖縄は昆布でだしを取るようだ。昆布を扱う影響で、大阪も昆布文化になったらしい。
僕は小学校6年生の2学期に、東京から大阪に転居した。大阪の食べ物で、「おいしいなあ」と思たものがある。それは塩昆布だった。小倉屋山本の「えびすめ」。1枚あれば、茶碗1杯のご飯を食べられる。そう思った。
その影響で、塩昆布大好き人間になった。標準語から関西弁に変わったのも、塩昆布のせいだと思っている。正確に言えば、東京なまりの関西弁だが。
人生の終盤になっても、昆布好きは変らない。ただ、茶碗1杯となると、昆布は2、3枚はほしくなったなが。
長い人生だから、変化もある。ある時から、塩昆布は永田屋に変わった。偶然の出会いがあったからだ。
行きつけの居酒屋さんで、歯医者さんと知り合った。ちょうど歯の治療を考えていた時だったので、その歯医者さんに診ててもらうことにした。
歯医者さんは診察する時刻を設定してくれた。その日の最後の患者になるように。治療が終わると、2人で飲みに行くためだった。それが恒例化してしまっった。
その歯医者さんは大阪市・天満端のビルの中で営業していた。ビルの隣が永田屋だった。そこで、飲むために治療に行くたび、そこで昆布を買うようになった。
大阪の昆布文化は、ここに極まれると感じたことがあった。大阪市・空堀通りに、昆布屋さん「土居」がある。店には、昆布でだしを取り、それを瓶に詰めただけの商品があった。これぞ、究極ではないか。
大阪以外に住んでいる友人に、土産として持って行ったことがある。551の豚まんに匹敵す大阪土産である。豚まんよりもいいのは、持って行く電車の中でも、におわないことだった。ただ、訪問先で、「何ですか?」と聞かれたが。
乾燥させただしコンブを用意し、軽く酒をふる。2枚の昆布で、はんぺんをはさみ、2~3時間置く。はんぺんを薄い2枚にするように包丁で切れ目を入れ、そこにワサビを解いたポン酢を塗る。
僕は京都府と奈良県の府県境に住んでいる。定年になって大阪に出る機会が減り、小倉屋や神宗や永田屋との縁が薄れてきた。そこで、スーパーでフジッコやくらこんの細切り塩昆布を買ってきて、これまで培ってきた昆布文化的な体を、何とか維持している。(梶川伸)2024.12.04
更新日時 2024/12/04