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編集長のズボラ料理(776) 車麩玉子

麩は水分を含んだ状態で

 テレビのコマーシャルを見て、思わず笑ってしまった。竹輪の穴にマロニーを詰め、それをおでんの具にしていた。
 乾燥したマロニーを穴に差すのはいとも簡単だろう。それが水分を含んで膨らみ、穴を埋め尽くす。それはグッドアイデアだから、笑いの対象ではない。穴には何か詰めたくなるものだという、人間の行動がおかしかったのだ。
 竹輪の穴にはキュウリを差したくなる。これは簡単で、即ビールのつまみとなる。ただ、もろみをつけたくなるから、それを用意しておく必要がある。
 しかし、いつもいつも、もろみがあるわけではないから、赤みそで代用する。赤みそがなけかれが、ほかのみそにする。梅肉もいいではないか。それらもなければ、しょうゆかマヨネーズを使う。それすらなければ、竹輪キュウリは食べないことにするが賢明な判断だ。
 チーチクなるものがある。これもビールのつまみにはいい。竹輪にチーズが詰めてある。作るの結構面倒だが、売っているのでこれに頼る。旅の列車の中で飲む時には、存在感を発揮する。
 レンコンにも穴がある。だからミンチを詰めてしまう。レンコンの穴の一般的な活用法といえる。お世話になった奈良市の居酒屋さんでは、貝柱を細かく切って詰め、てんぷらにしていた。銀行マンの夫婦が老後にやっていた小さな店だったので、売り物といえば、それしかなかった。仕方がないので、毎回のように注文して、ついんい食べ飽きてしまった。
 今回のズボラ料理は麩を使う。スーパーをウロついていて、穴の開いた麩を見つけたからだ。車麩という名前だった。確かに、タイヤの中心部が繰り抜かれた形をしている。さて、何を詰めるか。
 仙台市を起点に、宮城県、岩手県を少し回ったことがある。起点は仙台市で、たまたま仙台市を訪れていた友人と連絡を取り、居酒屋さんで一杯飲んだ。頼んだ酒のあての中に、仙台名物の油麩を煮て玉子でとしたものがあった。これをアレンジしよう。
 車麩を水で戻し、だしで煮る。味つけは砂糖、みりん、しょうゆ。麩はいったん取り出す。溶き玉子に刻んだネギを加える。フライパンに軽く油をひき、麩の両面をサッと炒め焼きする。そのまま、穴に溶き玉子を入れ、ふたをして蒸し焼きにする。
 ふと思う。車麩は何で穴があるのだろう。わざわざ空けたのだろうか。そんなことはないはずだが、ひょっとしたら穴を埋めたくなる人のためではないかと笑ってしまった。(梶川伸)2024.12.09

更新日時 2024/12/09


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