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編集長のズボラ料理(517) 豚肉とデトロイトのオリーブオイル炒め

デトロイトは混ぜるだけでもいいくらい

 アメリカには行ったことがないので、当然ながらデトロイトにも行ったことはない。それでも、自動車の街だということは知っている。
 今は全く自動車を運転しなが、昔は車が好きだった。新聞記者の新米のころ、夏休みスタートの午前0時に任地の和歌山市を出発し、北陸を回って800キロ走り、深夜に福島県会津若松市に着いたことがある。そのルートの高速道路は名神しかなかった時代のことだ。そんな無茶もしていたが、ピタリとやめた。
 1984年に、グリコ事件が起きた。記者としての仕事が忙しく、マイカーに乗って遊んでいられなくなった。事件発生から初めての休みで、久し振りにマイカーに乗ろうとしたら、バッテリーが上がっていた。修理をして乗ったが、次の久し振り休みで、またバッテリーが上がっていた。腹が立って、廃車にしてしまった。
 それ以降、車を運転したのは1回だけ。知り合いが入院し、車を置いていた場所から自宅まで運んでほしい、と頼まれた。事件から13年過ぎていた。その間に、クラッチはシフトレバーからオートマチックに変わっていた。足で踏むペダルは3つから2つに減り、ブレーキは左右どちらの足で踏めばいいのか面食らった。この経験から、運転をすることを、再びやめた。
 運転免許証だけは持っている。ミニバイクには乗るからだ。そのため、高齢者講習の通知が来た。運転の実地もある。自動車教習所ではあるが、久し振りに運転できる。楽しみして、出かけた。
 会場でアンケートに答える。問いの中にどれくらいの頻度で運転しているか、という項目があった。正直に35年間で1回と記入した。そうすると、運転は僕だけ免除。車を壊されてはたまらん、と考えたのだろう。仕方ないから、ほかの人の運転を見ていたら、高齢者講習を見事パスした。
 それほど、車と縁のない僕だが、デトロイトくらいは知っている。アメリカ大統領選では、デトロイトなどのラストベルトが注目をされたし。
 知っているつもりだったが、知らないデトロイトに出くわした。奈良市のデパートの地元野菜のコーナーにデトロイトはあった。しかも、フォードが生産したものではないから、どう考えても走りそうもない。買って帰って調べると、正式にはビーツデトロイトと言い、ビーツの幼葉らしい。これもわかりにくいが、ベビーリーフのことらしく、これならスーパーの野菜売り場でも並んでいる。
 フライパンにオリーブオイルをひき、豚肉を炒める。味付けは鶏ガラスープの素と塩、コショウ。豚肉に火が通ったら、デトロイトを加えてしょうゆを少し垂らし、サッと炒める。デトロイトを入れた後は、車とは関係ないがスピード感が大事。(梶川伸)2021.06.28

更新日時 2021/06/28


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