編集長のズボラ料理(496) 簡単イカ飯
昔は駅弁が旅の楽しみだった。中でも学生時代に食べた富山駅の「ますのすし」が好きだった。
ある時、出張で富山に行った際、大阪への帰りに富山駅で「ブリのすし」を見て、食べてみた。そのとたん、ブリのすしが1番になり、ますのすしは2番に転落した。それほど多くの駅弁を食べたことがないから、富山ダービーみたいなことになった。
毎日新聞の記者になったのは1970年。そのころは、大阪市・難波の高島屋が正月に駅弁大会という催しを開いていた。旅に行かなくても各地の駅弁を買うことができるので、会場は大変なにぎわいだった。
今は正月を待たなくてても、JR新大阪駅にはたくさんの駅弁が並んでいる。関西のものだけでなく、各地のものが交代で店開きするので、つい何度も足を運んでしまう。
1番気に入ったのは、新幹線で広島に行く際、ホームで買った「さばサンド」だ。京都府八幡市、居村屋の商品。焼きサバ、レタス、レモンの輪切り、少量のタマネギのみじん切りをパンにはさみ、マヨネーズを少し加えている。サバのサンドイッチには意外性があり、買った時は590円とお値打ち感もあった。
新大阪駅で駅弁を買う時、さばサンドもそうだが、概してシンプルな駅弁を選ぶ。例えば福井市の「越前かに棒すし」。酢めしの上に、ほぐしたカニの身を敷き詰めている。
名古屋市の名物、ウナギのひつまぶし弁当があった。高いなあと思案していたら、その横に「ひつまぶし巻き」があった。中身はウナギのかば焼きを刻んで混ぜた語は。1100円。これなら何とかなる。当然、こちらを買った。
広島・宮島口の「穴子飯(あなごめし)」も時々売っている。しょうゆ味のご飯の上に、切った焼きアナゴが並べてあり、ちょっと漬け物が添えてある。これもシンプルだが、見かけると引き寄せられる。団塊の世代は「シンプル・イズ・ベスト」のCMで育っているから、単純なもんである。
シンプル駅弁では、北海道・森駅の「いかめし」は根強い人気がある。デパートで北海道店があると、ほとんどいっていいほど、出店している。これもお値打ちだから、しばしば買うことになる。
今回は作ってみた。イカは皮をはぐ。胴から頭と足を切り放し、内臓と軟骨を外す。足を細かく切る。シメジも小さく切る。この2つをご飯に混ぜ、白だしを加え、イカの胴に詰め、入口をつまようじで止める。鍋にだしを取り、砂糖、酒、みりん、しょうゆで味をつけ、イカの胴を煮る。つまようじを外し、輪切りにして皿に盛る。シメジも一緒に煮て、たれとしてかけて食べる。
簡単イカ飯ではあるが、作った後で、いつも思う。北海道展で買った方が楽やなあ。(梶川伸)2021.04.08
更新日時 2021/04/08