編集長のズボラ料理(489) ツクシのつくだ煮
ツクシがおいしいとは思わない。でも、しかし、春になると、1回だけつくだ煮を作って食べることにしている。
ツクシのつくだ煮が、特別においしいとも思わない。ツクシらしいとも思わない。でも、春に1回だけ作る。
なぜか。理由は2つある。
1つは何となく春らしいから。ツクシを摘んでいると、春らしいと思う。特に僕のような団塊の世代以上の人は。
西国33観音を回り、大津市の12番・正法寺に行った時だった。お参りをすませ、山道を下って行くと、バス停のそばで仲間がツクシを見つけてしまった。こうなると、先には進まない。バスが来るまで、ツクシを摘む。
それほど密生してなかったので、結局集めたのはわずか40本ほど。その夜のおかずにする気満々で、早くもバスの中でツクシのはかまを取っていた。このくらいなら、2口か3口で食べ終わるのに、入れ込みがすごい。そこで、僕は洗脳されてしまった。春にならば、ツクシを食べるもんだと。
四国遍路の先達(案内人)をしていると、もっと大変なことになる。愛媛県四国中央市の65番・三角寺の遍路道など、いたる所にツクシが生えている。1人が見つけたら、みんなが探し出す。メンバーは団塊の世代以上がほとんどで、しかも女性が多いから、もう手におえない。摘むのに満足すると、早くもハカマを外し始める。1泊2日の日程だから、何とか家に持って帰れるだろうが。春は遍路よりツクシだと、頭に摺り込まれてしまった。
もう1つは、僕が住んでいる地理的条件による。半田舎に住んでいるので、ツクシも生えている。多くはえている場所は3カ所ある。まず、自宅から5分あまりの道端。近いのだが、問題点がある。犬の散歩道でもあり、おしっこをかけている恐れがあるので、見るだけにする。
次は歩いて30分ほどの田んぼのあぜ。少し遠いので、最近は敬遠している。最後は歩いて15分ほどの場所の土手。ここは密生しているので、最適の場所といえる。こんな簡便さのために、ツクシをつい摘みまくる。」
摘んだきて、まず水洗いする。次にハカマを取る。これが結構手間だが、摘んでしまった以上、仕方がない。フライパンにサラダ油とゴマ油をひいてツクシを炒め、水、砂糖、酒、みりん、しょうゆで煮る。照りが出るまで煮詰める。
ツクシで春を食べる。「苦みがいい」などと、分ったようなことを言いながら。と同時に、「今年もめんどうくさい作業が終わった」と、ホッとする。(梶川伸)2021.03.11
更新日時 2021/03/11