編集長のズボラ料理(228) コーンとチーズの包み揚げ
昔は「トウモロコシ」と言った。もしくは「キビ」「トウキビ」。最近は「コーン」「スイートコーン」と言うことがある。
スイートコーンはトウモロコシの甘い種類のことを言うのだと思う。だから甘いのは当然なのだが、本当に甘い。
以前、山梨県・清里のペンションに、遊び仲間で泊まったことがある。泊まった翌朝、ペンションの主がみんなに手書きのチケットを1枚ずつ渡してくれた。そばに広がるトウモロコシ畑に持って行って、おじさんに見せれば、1本もらえると言う。簡単なことだから、丁寧な説明があるわけではなかった。
行ってみた。簡単どころではない。トウモロコシは広いうえ、チケット窓口があるのことではない。そこでおじさんを探し回る、1本のトウモロコシを手に入れるのは、並大抵のことではない。希望が絶望に変わる寸前、おじさんはやってきた。これは奇跡みたいなものだった。ただ、ドラマチックな出会いにしては、その後の展開が陳腐だった。おじさんはそばのトウモロコシに手を伸ばし、ポキンと折って渡してくれただけだった。
食べ方も教えてくれたが、簡単すぎて感動がない。「皮を手で取って食べなさい」
ゆでなくていいのか、焼かなくていいのか。そう思ったが、とりあえず皮をむく。粒は白っぽい。「まだ、熟れていないののではないか」と不安を抱きつつ、かぶりついてみた。甘~い。生のまま1本食べて、おじさんと出会った奇跡に感謝した。感動の結末は、「スイートコーンは甘い」を実感したことだった。
遊び仲間の1人が、スイートコーンの炊き込みご飯に凝っているという。僕にも食べることを、しきりと薦める。でも、「甘いご飯なんて」という気持ちが、ブレーキをかけている。これは清里で学んだことである。
そこで、炊き込みご飯の代わりに、ギョウザを作ることにした。冷凍のスイートコーン、とろけるチーズを一緒にギョウザの皮に包み、油であげる。大葉を加えてもいい。ビールのつまみにしながら、清里の奇跡の出逢いに感謝する。(梶川伸)2016.11.21
更新日時 2016/11/21