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編集長のズボラ料理(201) 豆腐と刻みナガイモ

上に乗せるものは好みで追加を

 「さかなはあぶったイカでいい」。八代亜紀が歌っていた。どこかカッコいい。
 「あては豆腐さえあればいい」。そんなことを言う酒飲みがいる。僕もその1人ではあるが、これはカッコいいというレベルまではいかないような気がする。それはなぜだろう。
 豆腐はあまりにも一般的なのだ。スーパーに行けば、何種類も売っている。しかも安い。オーソドックスな豆腐は、ジワジワと値が下がっているのではないか。そう思っていたが、最近はどんどん種類が増え、中には高いものも出てきた。人間世界同様、豆腐界も貧富の二極化が進んでいる。
 昔も高い豆腐はあった。その代表が京都の湯豆腐だと思う。すぐに2000円から3000円になるし、油断をしていると夜は5000円にもなる。京都は寺の拝観料と湯豆腐は高いと決まっている。
 だから僕はもっぱら、北野天満宮の前にあるリーゾナブルな店「とようけ茶屋」に行く。しかも、お得なランチの時間帯に行く。以前、客を案内してその店に向かった。ところが店の前に列ができていたので、あきらめた。
 実はイイカッコをして、京都駅からタクシーで乗り付けていた。やむなく運転手さんに「どこか、湯豆腐の店に送って」と、ふところ事情を気にしながらお願いした。すると運転手さんに一蹴された。「湯豆腐は、家で食べるものですよ」
 「なるほど」と思い、結局安い居酒屋さんに方向転換して、昼から飲むことにした。タクシーから降りる際、「高い金を払わずにすんだわ」と運転手さんにお礼を言い、高いタクシー代を払った。何のこっちゃ。
 スーパーの豆腐で最近気になったのは、山芋(やまいも)豆腐だ。これは高い方の豆腐である。とは言いながら、豆腐なので300円前後なので、気軽に帰る。食べてみると、山芋(ナガイモかもしれない)を刻んだものが混じっていて、おもしろい歯ごたえで気に入った。
 山芋豆腐を時々買い、通ぶって食べているうち、ふと気がついた。刻み山芋が豆腐の中に隠れているのは確かに魅力で、作るのは難しかもしれないが、食べてしまえば豆腐の外にあったとしても、同じことではないかと。
 もめん豆腐を水切りして、平たい角型に切り皿に並べる。ナガイモを細かく切り、色がかわらないように、ごく少量の酢をふって、かき混ぜておく。それを大量に豆腐の上に並べる。白と白で色がないため、青ノリの粉を散らす。好みで薬味をかけ、しょうゆかポン酢で食べる。
 これなら安い。しかも、ナガイモはなぜか、スーパーで1カ月に1回ほど割合で安売りをしているから、こちらも安い。これならタクシーの運転手さんに怒られることはないだろう。(梶川伸)2016.08.04

更新日時 2016/08/04


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