編集長のズボラ料理(74) アボカドとエビの白和え
世間全般的にそうだと思うが、年配の女性は活発で行動的だ。遍路仲間もご多分にもれず、圧倒的に女性の天下である。
僕らのグループの十数人で遍路に行くと、男はいつも4人しかいない。残りの10人以上は女性なので、僕などは「ハーレム状態や」と強がってみるが、いつも主導権は女性が握っている。
メンバーの1人、京都府福知山市の女性も強い。だから、役行子(えんのぎょうこ)という堂々たるニックネームを持っている。山の遍路道を歩く時など、遅れた人の様子を見に、坂道を登ったり下りたり。まさに修験道で山々を走り回った役行者の末裔(まつえい)のような人である。
霊感も鋭いと自認していて、占い師の名鑑にも載っている。だから、話は途方もない。自らは正一位稲荷大明神がついているという。ある会合で輪になって話しているうち、正面に座っていた人からの気をビシビシ感じた。相手は不動明王がついていたらしい。
互いに口では何も言わないのだが、気と気の見えない火花である。やがて敵は、顔から冷や汗を出して中座し、正一位稲荷大明神が勝ったのである。そのことには、誰も気づかなかったとか。う~ん、とうなってしまうが、面白いことこのうえない。正月に伊勢の海に入ってみそぎをしているので、その根性を思うと、信じたくもなる。
家では農業をしている。黒豆の枝豆と、スイカづくりには自信を持っている。以前、遍路のメンバーで、枝豆を取りに行かしてもらったことがある。中庭に棒が立ててあり、上の方にカラスの死骸が吊るしてあった。何となく不気味である。気と気の戦いなどの話を聞いているから、なおさらである。実はカラスよけのためではあるのだが、それも黒魔術っぽく見えた。
それぞれが枝豆を収穫し、ビニールの大きなごみ袋に入れたあと、食事をごちそうになった。行子はオールマイティーで、調理師の資格も持っていて、料理もうまい。食卓にいくつも料理が並んだが、感心したのはダイコンの白和えだった。作り方が想像を絶する。大根を細めの棒状に切ってガーゼに包む。それを洗濯機の脱水機にかけて水分を切るという。行子はそんな魔術も使う。
淡路島・東浦の漁師さんがやっている食堂「渡し船」でも、洗濯機マジックを聞いた。タコを煮ると前に、脱水機にかけ、タコのぬめりを取って、さらに柔らかくするためだという。タコは目が回ることであろう。
むきエビを買ってきて、軽い塩でゆでる。背わたを取り、塩水で洗って汚れを洗うと、さらに良い。アボカドを適当に切る。絹ごし豆腐を水切りしてつぶし、練りゴマを加え、白しょうゆを少し加え、エビとアボカドと和える。魔術ではないのだが、色が美しいので、女性向きかもしれない。(梶川伸)
更新日時 2014/02/21