豊中・池田の文化財③ 呉春筆「白梅図屏風」
ほのかな月明かりに照らされて、細く伸びた梅の枝のシルエットと、たくさんの小さな白い花が、夜のしじまの中に浮かび上がります。広げると6メートル以上にもなる大きな画面。この屏風の前にたたずんでいると、何だか自分が梅林の中に入り込んでしまったみたいな気分になります。
それだけではありません。とっても静かで、凛(りん)とした光に包まれているような不思議な思いがしたり、ひんやりとした空気が、やわらかな梅の香を運んでくるかのような良い気持ちになったりします。心の奥底に沈んでいた想いが、じんわりと溶け出してくる感じ、といったら大げさでしょうか。
どうも、単に場景を写実的にとらえているというだけの絵ではないようです。作者の呉春は、与謝蕪村の詩情と円山応挙の写実とを受け継ぎ、さらに洗練された絵画作品を産み出しました。四条派の中心人物となって多くの弟子たちから慕われ、現代につながる日本画の流れを創り出しました。四季の花鳥を題材とするだけにとどまらず、私たち誰もがそこに抱く情感を表すことに成功している点が、呉春の魅力といえましょう。(阪急文化財団 学芸課長・仙海義之)
◆逸翁美術館2014早春展「花・はな・HANA-(重文)呉春筆白梅図屏風-期間限定公開」で展示。陳列期間は1月18日(土)~2月16日(日)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」59号(2014年1月16日)
更新日時 2014/01/17