編集長のズボラ料理(512) 新タマネギとミンチのトマトジュース炒め煮
洋食メニューに欠かせないものが、いくつかある。ますハンバーグ。そして豚カツ、エビフライ。それにミンチカツ。こらが四天王と言える。
それらに肉薄して、鶏のから揚げがあるが、洋食の王道からは少し外れる気がする。チカンかつなら、まだ許容範囲だろうが。
ポークソテーも限界線上のアリア。いや、線上にある。なぜ四天王に食い込まないかというと、豚カツの存在感があまりにも大きいからだ。それにたいていはソースをかけるが、四天王にもくっついて、その威厳を損ねてしまう。
ビーフステーキも、洋食の範疇から少し外れる気がする。高すぎるのだ。ビフカツなら、まだ許容範囲だが。
四天王しんがりのミンチカツのことを、メンチカツと聞いた時には、腰を抜かすほど驚いた。何だか通のように聞こえるので、僕もメンチカツ派に傾きかけた。しかし、「ミ」ではなく「メ」は、どう考えても変だと考えて、ミンチ派に戻った。
第一、豚メンチとは言わないし、合いびきメンチもなじみがない。それどころか、メンチカツからは、「メンチ切る」のヤンキー言葉を連想してしまう。上品な洋食とは相容れない。
気になったので調べてみて、今度は卒倒するほど驚いた。その昔、洋食屋さんが英語の音から「メンチカツ」と書いたのが始まりだという。ミよりもメの方が古かったのだ。
驚きはそれだけでは止まらない。実は音の聞き間違いでミがメになったという。何というミス。驚きはさらに深まる。やがて、正しい音のミが主流になったとさ。ああ、メが回る。
ついでに「メンチ切る」の時代的変遷は、次のようになるそうだ。目ん玉切る→メンタ切る→メンチ切る。
新タマネギはくし切りにする。セロリは長めの乱切り。合いびきミンチを用意する。フライパンにオリーブオイルをひいて熱し、3つを炒める。味付けは鶏ガラスープの素、コショウ。火が通ったらトマトジュースをヒタヒタ程度に注ぎ、ウスターソースを加え、煮詰つめていく。
合びきでなく、豚ミンチでも牛ミンチでもいい。でも、やっぱりメよりもミだ。(梶川伸)2021.06.09
更新日時 2021/06/09