編集長のズボラ料理(493) キュウリの南蛮漬けトロロコンブ乗せ
バブル経済の崩壊の後、日本経済は停滞した。その中で、旅行だけは活発だった。新聞の夕刊を開くと、バスツアーの広告ばかり載っている時期があった。
そのころ、ツアーの中身には変化があった。観光、温泉のほかに、冬のカニツアーと年末の買い物ツアーが目立つようになった。
僕も時流に乗ってみようと思い、買い物バスに乗ってみた。別に買い物をするつもりもないが、雰囲気を知ろうと思った。といえば聞こえがいいのだが、本音を言えば、びっくりするほど料金が安かったからだ。
正月商品を買うのが目的のツアーだった。目的地は福井県の大きな海産物の販売施設。どっさり買い込んで、発泡スチロールの箱に入れてもらう客が多かったが、僕は安さ体験が主目的なので、その手には乗らない。カニのセリなどもやっていて、見ているだけでおもしろい、と言い聞かせ、決して手を上げなかった。
昼食はその施設の広い部屋で、カニ汁。物足りなかったが、低額料金の⑦ツアーだから文句は言えない。お腹がすいたら、自分で何か買って食べろということだろうが、その手には乗らない。
帰りには、敦賀昆布館に寄った。そこでお土産の買い物をしてもらい、旅行会社としてはバックマージンをもらう仕組みになっているのであろう。それが安い料金に反映されているので、文句は言えない。
ここでは試食だけに専念する。買い物へと誘う設定だが、その手には乗らない。物足りなかった昼ご飯を、試食で補えばいいので。
でも、大きな成果があった。昔からの疑問が溶けたのだ。疑問とは、とろろコンブとおぼろコンブは同じなのか、違うのこというものだった。
おぼろは職人がコンブを削って作る。とろろはコンブを重ねて圧縮し、重なっている部分を機械で削る。そうだったのか~。やっと疑問が解けて、後は「あとはおぼろ~」「トットロトトロ」の気分である。こうして、格安旅行代金だけで、1日を過ごした。
キュウリに塩をふってしばらく置き、短冊に切る。酢、薄口しょうゆ、みりん、酒、ゴマ油を混ぜたたれに漬けておく。皿に盛り、とろろコンブをかける。
ととろコンブは便利だ。ちょっと味を変えようと思った時に使う。だから常備している。僕のおやじはお椀(わん)にとろろ昆布を入れ、しょうゆをかけてて、熱湯を注いで飲んでいた。僕はさらに梅干しとカツオ節も加える。おぼろコンブは使わない。ちょっと高いから。(梶川伸)2021.03.27
更新日時 2021/03/27