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編集長のズボラ料理(492) 春キャベツとベーコンの半熟卵グラタン

もちろんゆでて半熟卵を作ってもいい

 1番難しい料理は半熟のゆで卵ではないか。僕はそう思っている。なぜなら、僕は何度やってもうまくできないからだ。
 同じ思いを持った友人がいる。妻に先立たれてから、自分で料理を作る機会が増えた。作り始めると、それを報告したくなるようだ。僕がズボラ料理を書くのと、同じ精神構造を持っているに違いない。彼の聞き役の1人が僕だった。
 彼はゆで卵を作る器具を買った。それで7分ゆでる。「それだけ」と、さも簡単に言う。こっちの下手さ知っているから、上から目線で言い放つ。
 僕はそんな器具まで買うつもりはない。7分をヒントに、鍋でゆでる。時間がきて卵をあげ、いざ殻をむこうとすると、うまく殻がはずれない。それでも無理やりむくと、白身が一緒にはがれ、下手をすると全体の3分の1は捨てることになる。
 卵の体をなしていない。アメリカ漫画で、ネズミがかじりまくったチーズが出てくるが、それを連想させる。だから半熟のゆで卵は作る気がしない。
 友人の家で、そんな話をていた。この友人は女性だが、「料理はしない」と豪語する。だから、半熟は難しいという話に同調するだろうと踏んでいた。ところが……。
 「そんなの簡単」である。何と、「500ワットの電子レンジで8分」と豪語する。卵をアルミホイルで包み、カップに水を入れ、卵をその中に沈める。それをレンジでチーン。ただし、レンジの調理本を読みながら、自信たっぷりに、迷うことなく。
 チーンと音がすると、卵を取り出し、水につけてから殻をむく。しかし、すんなりとはいかず、白身が殻にくっつく。でも、全く動じない。「手本を示そうと急いだからよ。本来はもった長い時間、水につけておく」と、自分のミスには全く頓着しない。それでも、僕よりは何倍もうまくいっている。
 自信たっぷりの友人の方法で、半熟卵を作る。殻をむく時には十分に水で冷やしてから。鍋にバターを入れてゆっくり温め、小麦粉を入れて混ぜ、いったん団子状にしてから牛乳を入れて伸ばし、ホワイトソースを作る。マカロニは塩をたっぷり入れてゆでる。春キャベツはざく切り。ベーコンを小さめの短冊に切る。これら3つをホワイトソースの鍋に入れ、コショウをふって混ぜる。それを容器に入れてオーブンで熱し、グラタンを作る。その上に半熟卵をつぶしながら乗せる。
 半熟卵は柔らかい方が、乗せた時の見栄えがいい。そこで、レンジで温める時間は友人より短めにする。「料理はしない」が自慢の友人の言いなりになっていては、ズボラ料理のプライドが許さないからだ。柔らかすぎて、殻がうまくむけずに形が悪くなったとしても、どうせ崩してつかうのだから、「全く心配ない」と自信を持って言える。(梶川伸)2021.03.23

更新日時 2021/03/23


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