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編集長のズボラ料理(470) タイのマスタード焼き

これは厚めに切ってしまったが、鯛は身がしっかりしているので、できるだけ薄く切った方がいい

 兵庫県明石市には、明石鯛がある。対岸の徳島県鳴門市には、鳴門鯛がある。日本酒のブランドの話である。僕は日本酒好きだから、どちらも飲む。
 酒のブランド名ではあるが、もとは瀬戸内海で育った魚の鯛からきている。潮の流れが速い海域で育ったから、身がしまって歯ごたえがいい。1番好きな魚を聞かれたら、僕はきっと鯛と答える。そういう人は多いのではないか。
 遍路旅の先達(せんだつ)をしていて、昼ご飯の場所も決める。なるべく地元のものを、と考えるのだが、これが結構難しい。参加者に好き嫌いがあるからだ。
 1番不評だったのは、徳島独特のお好み焼き「豆焼き」。自信を持って徳島市の人気店「はやし」に案内したが、全然受けない。甘い金時豆が入っていて、これが大阪人間にはなじめない。もう5年もたつのに、当時のメンバーに会うと「あれは、あかんわ」と、必ず蒸し返す。
 2番目に不評だったのは、徳島県のブランドシイタケ「しいたけ侍」を使った丼だった。自信を持って阿南市のロイヤルガーデンホテルのレストランに案内した。食べたのはその名も「しいたけ侍丼ロイヤル風」だった。シイタケの裏にミンチ肉をつけてローストし、それを丼にしていた。
 「ロイヤル」というしゃれた名前にもかかわらず、全然受けない。もう5年もたつのに、その時のメンバーに会うと、「あれは、あかんわ。半分残した」と、まだブーブー言う。徳島はどうも、昼ご飯の相性が悪い。
 その点、愛媛県はいい。鯛めしにしておけば、文句は出ない。その鯛めしには2種類あるから、ダブっても目先が変わる。
 宇和島市では、「かどや」で食べる。ここはタイの刺し身と卵かけご飯を合体したタイプ。ありそうでない。遍路旅は10回あまりで一周する。かどやが気に入った遍路仲間がいて、次のシリーズの鯛めしの時だけ参加した。遍路より鯛めしである。
 松山市・三津港でも鯛めしを食べる。ここは炊き込みご飯スタイル。店の名前が「鯛や」だから、まずいはずがない。
 明石鯛、鳴門鯛のほかにも、桜鯛やら紅葉鯛やら、人気者の鯛はいろいろな名前を持っている。今回は刺し身用の短冊を使う。裏側に軽くオリーブオイルを塗って、その面をオーブンでさっと焼く。いったん取り出して表側にも軽くオリーブオイルを塗る。マスタードに白だしを加えて、それを表側に塗り、その面をオーブンで軽く焼く。
 言ってみれば洋風のたたき。刺し身のように切って、レモンをかけて食べる。
 鯛の最大の難点は、骨が固く、小骨が刺さると大ごとになる。この料理は刺し身用を使っているから、作るのも食べるのも骨が折れることはない。(梶川伸)2021.01.0

更新日時 2021/01/02


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