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編集長のズボラ料理(458) 鶏と野菜のバルサミコ炒め

ブロッコリーはサッとゆでおいた方が無難

 焼き鳥屋さんに行って、不思議の思うことがある。鶏を刺している竹串は、なぜ燃えないのだろう。
 行ったことはないが、宮崎の焼き鳥は串がないそうだ。鉄板で焼くらしく、それが鉄板にうまいという。でも、焼き鳥には串がほしい。
 愛媛県今治市には、遍路でよく行く。ここも串がなく、やはり鉄板焼きと聞くが、食べたことがない。串がないと、風情がないと思うが。
 しかしながら、日本〇大焼き鳥とか言って、3だとか7だとかの地名が入ることとなると、宮崎や今治が入ってくる。不思議だ、
 神戸勤務だったころ、会社に近い居酒屋さんによく行った。そこの1番安い料理は、鶏皮だった。これは串に刺さず、フライパンでパリパリに焼いていた。40年近く前だが、150円だったと記憶している。
 これはそれでいい。居酒屋さんだから、焼き鳥屋さんの雰囲気にこだわらなくて構わない。煙モウモウでもないし。
 阪神大震災の後、あしなが育英会が神戸に大学生寮を造った。震災などで親をなくし、経済的にしんどい学生のための寮だった。
 寮で月に1回、時事問題を学ぶ会を開いていた時期があった。夜だったので会が終わると、学生を一杯飲みに誘った。だいたい、寮に近い居酒屋さん「八剣伝」に行った。
 もちろんお金は僕が払うのだが、食べ物の注文は学生に任せた。いつも焼き鳥は何種類か食べた。串がくると、不思議に思った。人数分ないのだ。
 食べる段になると、学生は串にささっているものを全て外した。串には鶏の部位が3つ~5つ刺さっているので、バラバラにすれば、みんなに行きわたる計算だった。そのことに、苦労してきた人生の軌跡を感じた。
 先に外しておくのは、良い方法だ。串に刺したまま食べるとなると、口を「い」の形に広げ、鶏を横から歯でくわえて串から引き抜く。これは難しいうえ、見た目が悪い。かといって、串を口の中に差し込むようにして食べると、1番先の鳥は食べやすいが、2つ目からは串が口の中に刺さって血だらけになるのを覚悟しなければならない。自殺行為に近い。だから、自宅では串の焼き鳥はしない。
 鶏のぶつ切りに塩、コショウを振り、オーブンで焼く。ピーマン、ブロッコリー、タマネギ、シイタケを食べやすい大きさに切って、油で炒める。後から鶏も加えて、さらに炒める。味付けは砂糖、しょうゆ、バルサミコ。
 ある時、八剣伝が満員だったことある。学生は「トリキでもいいですか」と聞いた。トリキは焼き鳥屋さん「鶏貴族」のことである。さらに学生はつけ加えた。「少し高いですけど」
 八剣伝は僕のためを思い、安い店を選んでくれていたのだった。そして、トリキでも、鶏はすべて串から外して食べた。焼き鳥屋さんに行くと、よくそのことを思い出す。(梶川伸)2020.11.23

更新日時 2020/11/23


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