編集長のズボラ料理(445) カボチャの天ぷらシナモン味
栗ご飯とカボチャのスープを、無傷で作るのは奇跡に近い。通常は手が血だらけになる。下手をすると指の1、2本がなくなっても、決して驚くことではない。
秋になれば、栗ご飯を食べたくなる。しかし作る時には、腹をくくらなけらばならない。まず、最初に取り組む皮むきが、この料理の最大の難関だからだ。
皮は固い。ナイフか小さな包丁で皮をむくが、皮に刃が入っていかない。固すぎる。何でこんな固いものも食べなきゃならないんや、と思う。
たとえ鬼皮をクリアしたとしても、次には中の渋皮が待ち構えている。これがまたしぶとい。栗は小さいから、なおさらやりにく。
手が滑って、ちょっと手を刺したり、切ったりするのは、当たり前のことなのだ。だから、作業の前には、バンドエイドを用意しておかねばならない。
そこで1晩、栗を水につけておく。もし人間なら、ふやけてしまうが、栗の皮は水分を幾分吸って。粘り強く抵抗する。
そこで、100円ショップで、栗の皮むき道具を買う。これで少しは出血量が減るが、やはりバンドエイドは用意しておいた方がいい。
この2つの皮さえやっつければ、後はは味なんかどうでもいい。栗ご飯は血のにじむ努力を食べるのだ。だから、その年の秋に1回でいい。どうしても食べたければ、むき栗を買ってきて使う。これなら、安売りの出血サービス品であっても、自分の手は出血しない。
カボチャの皮は、栗の5倍ほど固い。1つ丸まま買ってくると、包丁を入れて2つに切るのは、並大抵の力では成功しない。
もし、万能包丁を使うと、切る途中で包丁が動かなくなる。そこで全体重を包丁にかける。包丁を持つ手は痛みに耐え、やがて内出血する。それだけならいいが、下手をすると、カボチャの代わりに指を切ることになる。
半分に切ったら次は4つにし、次は8つにし、最後は皮を全部切り取る。徐々に力を使い果たし、その分、自分を切る確率が高くなる。
カボチャを煮るだけなら、皮は残ってもいい。しかし、カボチャのスープは皮をなくす必要があるので、無傷での生還は難しい。
今回は皮を半分くらい残す。しかも丸ままではなく、半分に切ったものを買ってくれば、危険性は大幅に減る。
カボチャはくし切りにする。皮が気になる人は、皮の半分くらいは切り取る。小麦粉をまぶし、小麦粉を溶かして少しだけコーンスターチを加えて水で溶いたものを、衣にして天ぷらを作る。皿に盛り、シナモンパウダーをふる。
お菓子とおかずの中間的なものだから、血みどろの戦いを挑むほどのものではない。(梶川伸)2020.10.11
更新日時 2020/10/11