このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(444) 焼きナスのゴマペースト

ゴマのほか、木の芽、大葉を細かく切ったものを飾ってもいい

 店でしゃぶしゃぶを食べるとする。タレはポン酢とゴマだれの2種類が出てくることが多い。さて、どちらをで食べるか。
 肉はゴマだれで、野菜はポン酢。それが主流派だろうが、僕は筋金入りのポン酢派だ。肉も野菜もポン酢をつける。それは、生活歴が影響している。
 徳島市に住んだことがある。40年ほど前のことだ。そこで、スダチを知った。ピンポン玉くらいの大きさで、ミカンの出来損ないのように感じたが、これがさわやかでいい。
 当時はスダチを大阪へのお土産にすると、大いに喜ばれた。貴重品だと思い、最初はチマチマ使っていた。しかし、徳島ではギュッと絞って、何にでもかける。刺し身でも焼き魚でも、酒でも焼酎(しょうちゅう)にでも。
 僕もやがて絞り放題が身についてしまった。みそ汁にも入れ、それが1番だった。皮をおろし金ですり下ろしたり、皮を削って浮かべたりするよなチマチマ方法ではない。スダチを切って2分割し、少なくとも半分は絞る。物足りなければ、1個全部絞る。家族で朝ご飯を食べれば、スダチの絞りかすがテーブルの上に並ぶ。これが特産の地での使い方だった。
 ある時、県中央部の木頭村に取材に行った。ダム計画に対して村長が先頭に立って反対し、計画を白紙にさせたからだ。取材先で教えてもらったのが、ユズだった。そこで、スダチ派からユズ派にコロリと変節してしまった。
 スダチは香りだが、ユズは味。だから絞って瓶に入れて冷蔵庫に入れ、保存できる。これは使いやすい。ユズとしょうゆだけをかけると、味をつけたポン酢の比ではない。
 そんな僕だが、しゃぶしゃぶの時は少し気を遣う。わざわざゴマだれも出てきているので、ほっておいては店に失礼になる。そこで、礼儀として肉を1回はゴマだれにつけ、後はポン酢をお代わりする。失礼な奴である。
 今回はゴマペーストを使う。そのままではなく、白だしとみりんで伸ばしておく。柔らかくしたい場合は、少しだしを加える。焼きナスを作って皿に盛り、周りに伸ばしたゴマペーストをあしらう。上にゴマふって飾る。
 これは神戸市の小料理屋さん「鶴のひとこえ」で出たものを参考にしたが、やっぱり本職が作ったものにはかなわない。ズボラには限界がある。ゴマかしがきかない。(梶川伸)2020.10.08


更新日時 2020/10/08


関連リンク