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編集長のズボラ料理(431) アイガモの紹興酒蒸し焼き

あまり長く蒸し煮すると、肉が固くなる

 鴨(かも)の料理には、講釈がつく。随分と昔だが、福井県・大聖寺の「山ぎし」で鴨鍋を食べたことがある。大人数で行ったこともあり、店の人はカモについての説明と、食べ方を懇切丁寧に教えてくれた。
 僕はカモのことを知らないので、「ヘ~」とか「ホ~」とか言うばかり。以下はしばらく、店の人の話。懸命にメモを取っておいた。
 カモは11月の狩猟解禁日から3カ月間だけしか取ることはできない。片野鴨池に来るカモが夕方になって田に帰る時と、朝に池に飛んでいく時に、三角の網を空に投げて捕まえる。
 許可を受けた何人かが毎年、網を投げる場所を決め、そこでしか捕獲はできない。つまり、捕獲数が多くならない仕組みを作っている。1匹で約3人前。カモが本当のおいしいのは、12月中旬からで、脂がのっている。冬の間に買って、余ったものは冷凍しておく。
 食べ方についても丁寧だった。
 治部煮(じぶに)から考案した。カモの骨てスープを取り、それにしょう油などを混ぜる。汁がわいてくると、1番おいしいロースの部分のそぎ身を、小麦粉をまぶしてから入れる。小麦粉をまぶすのは、味を逃がさないため。
 肉はあまり煮ると固くなるので、すぐにあげて食べる。汁をわんにとって、ワサビを溶き、そのつゆと一緒に食べる。
 骨と身をミンチにした団子も入れる。次はハクサイ、ネギ、キクナ、豆腐、しらたき、すだれ麩(ふ)。
 一通り食べると、今度は逆の順番。カモを煮すぎないようにするため。最後にヨモギそばでしめる。
 鴨は奥深い。食べ終わった後で、「カモ検定」の試験があるのかと思った。いったん聞くと、通ぶってみたくなるのが、浅はかなところ。
 友人と金沢21世紀美術館に行った時だった。「せっかく金沢に来てるから、カモの治部煮で飲もか」である。ところが、店を知らない。香林坊を30分も歩き回って、やっと看板に「治部煮」と書いてある店を見つけた。帰りの電車の時刻が気になり、味は覚えていない。生半可に通ぶらない方がいい。
 アイガモロースに塩、コショウをする。紹興酒、赤ワイン、砂糖、しょうゆ、酢を混ぜ、丁子も加えてタレを作り、それに漬けておく。フライパンでアイガモの皮の方から焼く(油は使わない)。5~6分したらひっくり返して、しばらく焼く。たれをかけて、蒸し焼きにする。食べやすく切って皿に盛り、煮詰まったタレをかける。
 通ぶって書いているようだが、テレビで見たものを参考にして作っただけのことである。カモは奥深いが、ズボラ料理の奥は浅い。(梶川伸)2020.08.20

更新日時 2020/08/20


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