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編集長のズボラ料理(449) キャベツとベーコンのワインビネガー煮

柔らかくなりすぎないように注意

 20年ほど前、キャベツ焼きブームがあった。簡単お好み焼きで、具はほとんどがキャベツの千切りだった。
 初めて食べてみたのは、大阪市のJR天満駅近くだった。天神橋商店で見つけた露店。いろいろなところに似たような店があったが、天満駅近くの店は確か、「100円焼き」の名前で売っていた。熱々を食べると結構いけた。
 庶民の街・天満にふさわしい。春駒、奴寿司、すし政という、昼なら500円ほどのお手軽なすし屋3グループがしのぎを削るような街である。10円まんじゅうも売っていた。僕がしばしばお世話になった天ぷら屋さん「天平」は、酒のあての天ぷら盛合わせは、小さいながらエビも含めて10品で600円前後だった。
 そこはキャベツのほかに紅ショウガが入っていた。紅ショウガは、これまた大阪らしい。立ち飲みやスタンドと呼ばれる居酒屋さんでは、紅ショウガの天ぷらを頼まないと、素人と見られる。タコ焼きではタコ以上の存在感を発揮する。
 100円焼きは、天神橋の街に十分になじんだはずだった。しかし、いつの間にか店はなくなった。
 八尾市で食べたものは、130円だったと思う。ここはキャベツ焼きという名前だった。これもいつの間にか、消えてしまった。
 近鉄百貨店阿倍野本店の地下食料品売り場でも買ったことがある。ここは120円で、キャベツの千切りに卵も入っていた。ただ、とっくの昔に姿を消してしまった。
 キャベツ焼きには、焼きあがったあと、一定のルールがあった。ソースを塗って2つ折りにする。これでキャベツ焼きは完成する。
 持ち運びしやすいので、電車の中で食べたことがある。においが車内に広がるので、あわてて食べた。口の周りはソースだらけ、歯の間はキャベツだらけになった。551の豚まんとお好み焼きは、社内で食べるものではない。
 そもそも、大阪でキャベツは存在感を見せる。串カツ屋さんではャベツをスプーン代わりに使い、容器からソースをすくって串カツにかける。これなら口にはしないので、2度づけ禁止ルールに抵触しない。
 カレー屋「インデアン」では、付け合わせはキャベツの酢漬けだ。通はカレーではなく、キャベツの大盛りを頼む。それでも、キャベツ焼きだけは絶滅危惧種になってしまった。何でやろ。
 キャベツを太めの千細切りにする。ベーコンを細く切る。コンソメスープでキャベツを煮る。その際、ローレル、クミン、クレージーペッパー(なければコショウと塩)、ワインビネガー(もしくは酢)を加える。キャベツが柔らかくなったら、水分を切って皿に盛る。
 簡単ピクルスのようなものと言える。これはインデアンの影響を大いに受けている。僕は店で、キャベツの大盛りを頼んだことがない。その反動でもある。(梶川伸)2002.10.26



更新日時 2020/10/26


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