心にしみる一言(225) 今、桜が散り始めた
◇一言◇
今、桜が散り始めた。
◇本文◇
春になると、よく桜を見に行く。見た日時はすぐに記憶から消えて行くが、忘れられない時刻がある。2019年4月3日午後4時50分。
京都市山科区の西国33所観音霊場番外札所、元慶寺に参拝した時だった。着いたのは午後4時半を過ぎていて、夕方が近づいていた。
花に包まれた寺。桜は十数本。狭い境内なので、唐風の山門、小さな本堂を包んでいる。ほかにも、ボケ、サンシュユ、ツバキが色を添え、しばらく見とれてしまった。
朱印をもらいに行くと、住職は言った。「1番いい日に来なはった。桜は朝と夕でも咲き方が違う。きょうは朝から満開やった」
話しているうち、爽やかな風が吹いて、桜の花びらが、ハラハラと舞った。住職はそれを見て、「今年の桜は今、散り始めた」。そんな桜のピークの瞬間に居合わせるとは。
住職の話は続く。「せわしゅうて、すまんの。5時になったら門を閉めるよ」。閉門の10分前だった。「バタンもきれいやさかい、また寄ってや」。出るのを待って、門が閉まった。中は落花が早まっていたことだろう。(梶川伸)2020.03.03
更新日時 2020/03/03