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編集長のズボラ料理(388) 大型卵きんちゃく

卵が崩れないように注意する

 大阪市・北新地のはずれに、昔から世話になっているカウンターだけの居酒屋さん「大輝」がある。定年後は行く機会が少なくなったが。
 店のおばちゃんは、総菜をたくさん作って大皿に盛り、カウンターの上に並べる。とてもおいしいというわけではないが、おばちゃんの陽気なキャラクターと店の雰囲気に誘われる客が結構いる。
 店に前回行ったのは昨年11月の誕生日の前後だった。現役中は誕生日には飲み仲間と、大福餅を持って行った。店のおばちゃんは甘い物が好きで、土産を食べながらビールを飲むのが、恒例の誕生祝いパーだった。
 生ビールがない店で、瓶ビールでつぎ合いながらのお祝いである。おばちゃんはビール好きだが、僕はビールは最初のコップ2杯ほど。だから、結局はおばちゃんが飲みまくるのが常だった。
 おばちゃんの最大の魅力は、年齢だろう。何歳になったか確かめはしなかったが、96歳か97歳のはずだ。昔は20歳くらいさばをよんでいた。これは記憶違いや誤差の範囲ではない。確信犯ではあるが、そのとてつもないうそがおもしろかった。
 80歳くらいからは観念したのか、ごまかしがきかなってきたからなのか、徐々にさば年齢と実年齢の差を縮めていき、ついに15年ほどかけて本当の年齢らしきものを言うようになった。歳が3けたに近づけば、怖いものはないのだ。96歳か97歳と書いたが、昔の大うそに比べれば、間違っても誤差の範囲だ。
 元気なおばちゃんだが、朝まで付き合ってくれた昔の力はない。前回行った時は客が多く、応対に手間取っていた。そこで、カウンターの中に入って手伝った。そのお礼だろう、帰りに土産を持たせてくれた。
 おばちゃんの自慢の料理の1つは、ゆで卵である。茶色の殻の大きな卵を使い、「伊勢神宮の卵」と言ってはばからない。伊勢神宮が卵を売っているとは思えない。これも年齢のうそに匹敵する口からでまかせだと思う。何度か、土産にもらったことがある。
 その時の土産も卵とミカンだった。当然ゆで卵と思って、持って帰った。自宅で袋を開いてビックリ。生卵20個。しかも、何かにぶつけたのか、うち4個が割れて、流れ出ていた。ちょっと珍しい土産だった。
 揚げの一辺を切って、そこから指と包丁で切れ目を入れ、袋状にする。そこに刻んだネギと生卵を3つ入れ、少し白だしをたらし、口をつまようじで閉じて、きんちゃくにする。鍋でだしを取り、砂糖、みりん、しょうゆで味をつけ、卵きんちゃくを煮る。中身が見えるように切って、皿に盛る。この卵は伊勢神宮のものでなくていい。(梶川伸)20.01.24
 

更新日時 2020/01/24


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