編集長のズボラ料理(685) はるさめのエビ・ホタテスープ
その昔、娘と息子と一緒に時々、京都市の回転ずしの店「武蔵」に行った。息子は量を選ぶが、娘は質だった。1皿1貫のもので勝負した。
娘がよく食べたのは、ボタンエビだった。それを連続で注文する。それから時が流れて、娘もええ年になったが、エビ好きは変わらない。
そこで一昨年、札幌市に遊びに行った際には、二条市場でボタンエビを探して送ることにした。びっくりしたのは、その値段だった。店に並んでいたのは20匹が1万円。店の主人は「中国での需要が高まり、値段は一挙に2倍に跳ね上がった」と、申し訳なさそうに説明した。
僕の驚き歩合から、店の人は懐具合を読み取ったようで、「10匹5000円でも送ることができる」と、水を向けてきた。その通りにしたかったが、僕にも意地がある。娘のところと、世話になっている親類に10匹ずつ送ったのだ。ちゃんと1万円使って。エヘン!
ここまでは良かったのだが……。娘は夫婦ですぐに食べたようだが、値段を言っていないので驚きが足りない。親類はどうかというと、わざわざクール宅急便で送っているのに、刺し身ではなく焼いて食べたという。感動が足りなすぎるではないか。
今年はその親類夫婦と、札幌に行った。海産物を自分の娘に家に送りたいというので、二条市場の例の店に案内した。ボタンエビがどれほどのものかを、思い知らせるためである。案の定驚きを見せたので作戦成功。さらに「10匹でも送れる」とサジェスチョンし、1年越して溜飲を下げた。
娘が遊びに来ると、エビを用意すれば、ご機嫌で食べている。最近はスーパーで4尾パック400円余りの大きなエビ買い、塩焼きにする。ただ、以前から気になっていることがあった。
食べる時に殻をむくと、中身は思いの外小さい。全体の4分の3は殻だから、もったいないではないか。
エビ殻を使う。焼いた後、テーブルに乗せる前に、殻をむいておく。鍋に水を入れて熱し、殻でスープを取る。鶏ガラスープの素、コショウ、ローリエも加える。できあがったらザルを通してボールにスープを移し、再度鍋に入れて温める。今度はベビーホタテも加える。このスープではるさめを戻してスープを吸わせる。器に入れて、乾燥パセリをふる。
娘の反応は、「エビの実より気に入った」。何や!エビ好きというより、エビの殻好きということではないか、(梶川伸)2023.09.11
更新日時 2023/09/11