編集長のズボラ料理(601) キーマ豆腐カレー
ラーメンはよく食べた。新聞記者だからウロウロしたのだが、ラーメン屋は昼ご飯でサッと食べられる良さがあった。
どうせなら、いろいろ食べてみようと思い、わざわざラーメン屋さんを選ぶようになった、30年を超す長い期間ではあるが、パソコンにメモを残した店は630軒に及ぶ、だからといって、そのデータが役に立つわけでもない。
1年5カ月、高松市勤務だったことがある。しかし、この間に訪ねたラーメン屋は1軒しかない。なぜか。
香川県といえばさぬきうどんだから、ラーメン断ちをしてうどんを食べたからだ。友人にもそれを宣言して、200軒を達成したら、ラーメンをおごってもらう約束をし、目標にと達したので、ラーメンデータに1店だけ追加となった。
うどんの方はどんどん数が増え、うどんのことを時々コラムに書いていた。やがて高松から大阪に異動になるのだが、直前に香川県の思い出をコラム書いた。
すると、記事を読んだ読者から、「最後のうどんをごちょそうしたい」と連絡があった。全く面識のない人だったが、ご好意に甘え、引っ越しの前夜、うどんを食べに連れて行ってもらった。その店が407軒目だった。
カレーも手軽だから、いろいろ食べてみた。それにはきっかけがあった。会社の近くを歩いていて、「カレー屋本店」なる店を見つけたのだ。ネーミングが素晴らしい。カレー屋の大元締めのような気がするではないか。
30年近く前のことだが、カレーは370円と安かった。カレーの元締めとしてはどこか威厳がない。そう思って店内を見渡すと、皿にも紙ナプキンにも、「大衆食堂」と書いてあった。
それ以降、100店ほど食べ歩いた。中には「元祖とんかつカレー」を名乗る店「カツ屋」、イカの塩辛を付け合わせにする「KENT]、マージャン店が昼だけマージャン台をテーブルにしてカレーを出す「ジャンカレーABC]など、おもろい店もたくさんあった。
ただ、キーマカレーは店で食べたことはない。なぜだろう。「キーマ」はヒンディー語やウルドゥー語などで「細かいもの」を意味するらしが、カレー界では王道からはずれるのだろうか。僕はキーマも食べるが、考えてみれば。いつも家でのレトルトのような気がする。
豆腐を水切りしてボールに入れる。レトルトのキーマカレー、生卵、カタクリ粉を加えよく練る、円盤状に成形し、フライパンに油をひいて焼く。
カレー屋の食べ比べでは、特異な店がある。それは「インディアン」。大阪市・堂島に毎日新聞の本社があった時は、すぐ近くの地下に店があり、よく食べた。毎日新聞の社員のほとんどがそうで、みんな「ルーに中毒性がある」と言いながら。(梶川伸)2022.05.18
更新日時 2022/05/18