編集長のズボラ料理(592) セリとシメジのパスタ
春というと、子どもころは「はーるの小川は♪」と歌った。学校で音楽の時間に、ビバルディ―の「四季」を習ってからは、「タタタタタータタ タータタ タータタタータンタン」と口ずさむようになった。
「四季の歌」の印書も強く、「はーるを愛するひ、と、はー♪」と口ずさむ。何とも爽やかな歌詞ではないか。
この歌から芹陽子に連想が飛ぶ。そしてセリとなる。次に「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」と口から出てくる。子どものころ、そんな順番で覚えて大人になった。
大人になって、本を読み、ビックリした。ホトケノザはピンクの小さなオドリコソウのような花だと恩っていたら、実は「コオニタビラコ」のことで、小さなのタンポポのような黄色い花と知った。
それだけではない。ゴギョウは「オギョウ」だという。そのオギョウとはハハコグサらしい。古代のものと、今のものが入り乱れるので、こんがらがって何のことか分からなくなる。
その点、セリは奈良時代からセリとして食べられていたらしい。セリには爽やかなイメージがあるから、せせらぎのそばに生えていてほしいと思う。ところが、少々汚れた川のそばで見つけることがあり、がっかりする。
梅花藻もそうだ。わざわざ滋賀県米原市・醒ヶ井まで見に行く。水清き小川の中で咲き、水面にサルスベリの赤い花びら散ってくると、「これでこそ、来たかいがあり」である。。
兵庫県・湯村温泉から日本海に車で行く途中、田君川で一面の梅花藻を見た、ここも清流。栽培しているようだが、清々しければそれでいいのだ。
定年になって年金の手続きのため、京都府伏見区の年金事務所に行く折りに見たことがある、どこにでもある街中の少し薄汚れた川。がっかりした。もっと自宅に近い場所でも、ポツポツと咲いている。イメージを無視して花だけを見るなら、温泉に入る必要もない。
スーパーで買うセリは、きっと清流で栽培しているのだろう。そう思わなけれが、調理なんかしていられない。セリは好きな長さに切る。シメジは石づきを切り、ほぐしておく。フライパンでニンニクオイルを作り、缶詰めのツナとシメジを炒める。味つけはコショウとしょうゆ。だしでゆでたパスタを加え、ゆで汁も少し加える。最後にせりも入れ、混ぜながらサッと炒めて、皿に盛る。
春を感じながら食べ、翌日の散歩はきれいな水の春の小川を歩く。汚れがある所には行かない。もしかして、そこでセリを見つけたら、前夜のパスタの味が台無しになる。(梶川伸)2022.04.09
更新日時 2022/04/09