編集長のズボラ料理(564) 大根の柿漬け
歳をとってきて、柿がどんどん好きになる。柿の縁のある場所に住んでいるからだろうか。
居住地は京都府の1番南の木津川市。市内の鹿背山は柿のちょっとした産地になっている。僕の家のそばには時期になると毎週日曜日、鹿背山の柿を売るテントが出現する。それを買う。
平日に柿を買いたなったら、近くのスーパーに行く。歩いて2分の場所にイオン、5分の場所に近商ストア、歩いて25分ほどの散歩道にアルプラザがある。3つとも、地元農産物のコーナーがあり、そこで買うことになる。地元愛と言えば聞こえがいいが、大きな理由は安いからだ。
自宅から歩いて2分で、奈良県の1番北の奈良市に入る。だから、生活圏は奈良と言っても差し支えない。だから飛び地的奈良県人を自称している。
京都も奈良も古い歴史を持つが、食に関しては大違い。京都には「京料理」や「京野菜」といった言葉があるように、食のランクは高い。一方、奈良は「奈良にうまいものなし」とさげすまれる。これが許せない。
奈良漬けがあるじゃないか、と胸を張る。ただ、酒どころの兵庫県・灘も手強い産地で、特に甲南漬けはなかなかの生産量を誇る。
清酒発祥の地じゃないか、と胸を張る。ところが今は、清酒の代表格はこれまた灘に奪われた。
となると、奈良が誇れるのは柿の葉ずしと、高速餅つきで名をあげた中谷堂のよもぎ餅しかないのか。悲しい現実ではあるが、奈良県・西吉野は柿の産地だから、柿の葉ずしくらいは偉そうしてもいいだろう。
奈良県人にはそれぞれ、好きな柿の葉ずしの店がある。僕の場合は、天川村の柳豊(やなとよ)を推している。あまり目立つ店ではないが、これが飛び地的奈良県民のたしなみである。実は、友人に、この店を教えてもらった。住んでいるのは兵庫県で、奈良漬け、清酒に続いてまた天敵の標語なのがしゃくにさわる。
今回は柿を使う。熟した柿をドロドロの実だけにする。大根の皮をむき、薄い輪切りにし、軽く塩をふる。柿に酢を加えて、大根を漬けておく。
こんなことを考えたのも、柿に縁のある場所に住んでいるからだろう。今年は鹿背山の一口柿ようかんも食べた。干し柿を使った奈良のお菓子「柿寿賀」も食べた。「奈良にうまいものあり」だ。柿だけだけど。(梶川伸)2021.11.26
更新日時 2021/11/26