編集長のズボラ料理(525) ゴーヤのアンチョビ天ぷら
夏の代表的な食べ物の1つにゴーヤがある。沖縄ではゴーヤーと伸ばすようだ。
ゴーヤーと聞くと、つい口をついて出る歌がある。「ゴ~ヤ~、よい子だねんねしな~」
テレビ番組「日本昔ばなし」のテーマソングだ。本当は「ぼ~や~」だが、ゴーヤーに引きずられてしまう。
日本昔ばなしとなると、市原悦子を思い出す人が多いだろうが、僕は違う。池原昭次の絵の方だ。2頭身の子どもが、おにぎり山を背景にして遊んでいる。高松市に赴任して、山の正体がわかった。讃岐平野にたくさんある山は、小さな三角おにぎりなのだ。
池原は高松市出身。きっと三角おにぎりの山を見ながら大きくなったのだろう。それをモチーフにしたに違いない。
池原は自分の作品を童絵と呼ぶ。その絵を好きだった画廊のおばちゃんと出会い、話に引き込まれて仲良くなった。
きっかけは自転車。誕生祝いに、友人からプレゼントされたという。そこまではよくある話。その次がおもしいろい。背の低い人で、もらったのは子ども用自転車だった。ここまでは、「そうなの」くらいのこと。
次に進む。自転車はハーレーダビットソンの製品だった。「ヘェー」である。
さらに次に進む。見るからにハーレーダビットソンのオートバイに見えると言う。「まさか」と思ったが、おばちゃんのエピソードに笑ってしまった。「足でこいで歩道を走っていたら、警察官に『車道を走りなさい』と怒られた」。まさか。
まだ次がある。僕が自転車で四国88カ所を回っていると話したら、ハーレー自転車をくれると言うのだ。翌日、現物が届いて驚いた。何とガソリンタンクやチェーンのイミテーションがついているではないか。見た目はハーレー。しかも、空気を入れる時は、ガソリンスタンドに行って、自動車用のもの使わなければいけない代物だった。
それが、子ども用なのだ、背の高い僕が、乗れるはずもない。部屋に入れて飾りにした。
棒が高松を離れる時、そのおばちゃんから池原の版画1枚を、餞別にもらった。大事にしていたが、僕が遍路に行くきっかけを作ってくれたノンフィクション作家、柳原和子さんにプレゼントした。彼女ががんになり、自宅からほとんど出られない状況になった時、自宅の壁にかけて見てもらおうと思ったからだ。亡くなった後、どうなったのかは知らない。
ゴーヤは縦半分に切り、種とわたを取り除く。くし切りにしたうえ、小麦粉を振りかける。小麦粉に少しコーンスターチを加え、さらにアンチョビソーを入れて練り、天ぷらの衣にする。ゴーヤに衣をつけて、油で揚げる。
今回はゴーヤを起点にした、個人昔ばなしだったとさ。(梶川伸)2021.07.19
更新日時 2021/07/19