編集長のズボラ料理(502) 新タマネギのマヨネーズ焼き
春から初夏にかけては、何でも「新」がつく。新年度。新学年、新入生、新人。みんな初々しい。
僕も新入社員だったことがあった。1970年入社。初々しかったか、といえばそうでもない。学生運動、大学闘争、ビートルズの世代だから、生意気な新人である。僕に限らず、みんなそうだったから、新人類とも呼ばれた。
訳がわからないくせに、上司にはすぐ反抗したがる。しかも髪が長い。上司や先輩記者から見れば、手が焼けるうえに、手に負えない。でも、可愛がられた。
赴任先の職場で僕は、久しぶりの新人だった。何せ、僕のすぐ上の先輩は10歳年上だった。だから、よく酒をごちそうになった。その代わり、マージャンの餌食になった。
最初に書いた記事は、交通事故だった。職場のすぐ近くで事故があり、「取材して来い」と命じられた。行ってみると、幸い軽いけが。これなら記事にならないだろうと思って、アイスクリームを買ってペロペロなめ、警察官の事故処理とはどういうものかを見ていた。
なかなか帰らないのを心配した先輩がやって来て、ペロペロを見つかってしまった。怒られた後、取材のやり方を教えられ、何とか記者人生初の記事が載ることになった。
それ以来、「梶ボン」と呼ばれることになった。今年74歳になったが、いまだに先輩は「ボン」で呼ぶ。{新」の持続力はなかなかのものだ。
新緑は清々しい。うちの近くの福寿園の研究所には、たくさんの茶の木が植えてあり、新茶を摘む若葉も美しい。茶畑を見ていると、直営のカフェ「花茶人」に引き込まれ、つい抹茶のケーキを食べてしまう。「新」の力はそれほど強い。
新ジャガ、新キャベツ、新ゴボウ、そして新タマネギ。どれも響きがいい。スーパーに並ぶと、つい買ってしまう。コレも新の力。今回もそうだった。
新タマネギは皮をむいて厚めの輪切りにし、塩・コショウを振る。さらに両面にサンショウの葉を張りつける。フライパンにマヨネーズを入れて熱し、マヨネーズが解けたらタマネギを入れる。裏面が焼けたらひっくり返し、しばらく焼いた後、ふたをして蒸し焼きにする。最後に醤油を垂らす。
先日スーパーに新ジャガを買いに行った。隣に「越冬ジャガイモ」なるものを売っていた。何か良さそげな名前で、目が止まった。でも、考えてみれば、古いジャガイモということではないか。袋を見ると、新品種「はるか」と書いてある。新なのか、古なのか、今度買ってみよう。こう思わせるのだから、もし古でもネーミングの力は大きい。(梶川伸)2021.05.03
更新日時 2021/05/29